吾輩は起業家である

第4巻

元アビリオン株式会社代表取締役 松田元さん
「僕の前に“道”はまだない」

更新:2006/4/28
文:堀内政彰(法政大学)

第2章 「お前は孫正義になれ」

「元ヤンキー・フリーター・ニートの三冠王社長」の異名を持つという、松田元さん。 本章ではそんな松田さんの過去にスポットを当ててみましょう。


松田さんの信念は「やりたいことをやる」ということでしたが、そのベースとなったご自身の経験があるんですか。
高校を3日で辞めたあと、16歳で大検取った時に気付いたんです。

松田:

(敬称略)

そうですね…。「常識って当てにならないな」っていうのが分かったからかな。「常識って何?常に識者がいるって何?」みたいな。こんなのを、僕は高校を3日で辞めちゃった時に気付いたんですね。厳密に言うと、高校を3日で辞めたあと、16歳で大検取った時に気付いたんです。

具体的にどういうことですか。

松田:

僕は当時、常識的な考え方にはまっていたから、高校卒業しない人って、ろくでもない人間ばかりだと思っていたんです。でも実際は、高校を誰よりも早く辞めた自分のようなバカが、翌年には誰よりも早く高卒の資格を取っちゃったわけで。いろんな人がなんだかんだ言ってくるけれど、あんなのウソじゃんって。世の中には「王道」っていう一本道だけじゃなくて、脇に細い道も無数にあって、そこの経由でやりたいことなんていくらでもやれるじゃんって。気付いちゃったんですよね、そこで。

失礼な話なんですが、元ヤンキーという噂を聞いたのですが・・・。

松田:

あはは!(笑)まぁね、どちらかというとそんな感じでしたね。(笑)

アウトローな道から、どうしてベンチャービジネスの世界に入ろうと思ったのですか。

松田:

う~ん、アウトローな世界から、表の世界へと、熱を入れる方向を変えたというか・・・。やっぱりこれは、僕の性格が原因だと思うんですよね。ヤンキーって、どうしてヤンキーでいるか分かります?なぜ不良は、周囲から不良と思われていることを知りつつ、不良であり続けるのか?

う~ん、そうですね。…かまって欲しいから?

松田:

そうそう!たぶんそこなんですよ。淋しがり屋なんです。それで人に認めて欲しいんですよね、すごく。僕もね、基本的に淋しがり屋なんです。人と何かをするのが好きだし、何よりも人に評価されるのが大好きなんです。誰しも認められたいという願望はあると思うんですけど、僕はその欲求が人より高いんですね。で、当時はとりあえず目立つために金髪にしたり、ピアス開けてみたりね。こういうことをして、認められようとあがいているような、そんなレベルだったんですよ。

そんな生活から、大検を取得して、早稲田大学に入ろうと思った理由は。

松田:

地元でだらだらしているときに、当時仲が良かった友人達を見ていて、「このままだと僕本当にダメだなぁ、モテないしなぁ」って考え始めて。アウトローな世界で本当に認められる為には、行き着くところまで行かなければならない。でも、そこまでの覚悟や度胸は僕にはなかった。だからこちらの世界に情熱を注ぐよりも、僕の覚悟やセンスで活躍できうる舞台のほうが、情熱を注ぐ価値があるのではないかと思ったんです。

それで、まずは地元で培われた「だらだら癖」を払拭しようと、実家の鎌倉から上京することにしました。完全に独り立ちしようと決意しまして。仕送りは一切貰っていませんでしたので、生活をするために、上京直後すぐに情報通信のベンチャー企業に入りました。その時に、そこでお世話になった事業部長や社長から、
「おまえみたいに、ガキの頃からのこのこ東京に出てくるヤツは見たことがない!面白いからおまえは孫正義みたいになれ!」
って言われたんです。

孫さんは当時からIT業界の中では注目を集めていましたが、世間的には今ほど有名ではなかったので、私自身、彼のことをよく知りませんでした。「ソフトバンクノソンマサヨシ」って片仮名が頭の中に浮かんでいるような感覚で。

そんなフレーズを頭に残しながらも、当面の目標であった大検スクールに入学し、4カ月間一生懸命勉強して、上京してから8カ月後、大検を取得しました。僕の予定だと、1年半かけて、のんびりと大検取得を目指そうと思っていたんですけど、思いのほか大検が簡単で、短期間で取れたため、時間にゆとりができたんです。

1年半もかけて日本の大学受験勉強をずっとやり続けるのもつまらないし、かといって他に目標とするものも見当たらない。そうして、一時的に目標を喪失してしまったんです。そんな時ふと、上記のベンチャー企業の社長の台詞が頭によぎって。「ソフトバンクノソンマサヨシ」が何者なのかを調べようと思ったんですね。で、ある日図書館で調べていたら、『起業の若き獅子』っていう本を見つけたんです。

その『起業の若き獅子』とは、どんな本なんですか。

松田:

記者の大下英治さんが、孫さんにインタビューした ものなんですが、読んでみるとすごいんですよね、孫さん。 彼の生き方にすごく感動しちゃって。 これはもう、僕も孫になるしかないと思ってね(笑) 僕もアメリカに行ったんですよ。 孫さんもいた、カリフォルニア大学バークレー校に入ろう と思い、カリフォルニアへ3カ月間。

でも、留学中に気づいたんですが、結局英語はツールに過ぎなくて、本当に大事なのは、教養だったり、自国文化に対する知識だったり、歴史の捉え方だったり・・・。そういう、その人の人間性や中身なんですよね。

『孫正義 起業の若き獅子』 著:大下 英治 (1999/07) 講談社

『孫正義 起業の若き獅子』

著:大下 英治
(1999/07) 講談社

 

当時僕は、大検受験で得た、非常に浅い知識しか持っていませんでしたので、こんな状況でアメリカの大学へ入ったとしても、英語が上手いだけの、中身がすっからかんの日本人になるなと思ったんです。
それで、いったん帰国して、日本の大学でイチから勉強しなおそうと決めたわけです。しっかりと勉強した後に留学をしても、決して遅くはないだろうと。

それに、もし失敗したとしても、その 4 年間から学ぶ失敗の経験ってかなり大きいと思います。「これいけないんだな」って、僕肌で感じてますもの。そういうことを考えると、学生起業とサラリーマン後の起業との大きな違いって、時間があること。若さ、です。

ちなみに、そんな高校時代から起業されるまで間、ご両親の反応はどうでしたか?

松田:

もう何も言わないよね。就職や卒業後の進路相談も全然しなかったですし。
父が銀行員だから、やっぱり高校を辞めた当初はすごく言われたんですけどね。「眉毛そるな、眉毛生やせ!ピアスするな、耳が膿んでる!」みたいに(笑)。で、こっちも「うるせー!」って反抗していて。ずっとそんな感じだったので、親は「もういいや」って感じで何も言わなくなりましたね。

今は応援してくれていますか?

松田:

そうですね。今は全面的に応援してくれていますよ。
今まで好き勝手やってきましたけれども、結果は全てきっちりと残してきましたから、ある程度信用されていると思います。
それに、何かトラブルに巻き込まれた時は、銀行員の親父の法律的な知識にすごく助けられますし。エリートサラリーマンも、やっぱすげぇなぁ、って(笑)。

高校中退、ヤンキー、フリーター、そして起業と破天荒な人生を歩んでいる松田さん。
ではここで、そんな松田さんの「心の円グラフ」を書いていただきたいと思います。

松田:

僕の考えているコアな部分が図で表現されればいいんですよね?
そうですね・・・。

「心の円グラフ」を書いていただきたいと思います。
 

こんな感じです。

松田 元さんの「心の円グラフ」

えっと、イメージとしては・・・。
僕は日本が大好きで(笑)そんな日本に生きながら、文化だったり社会だったり習慣だったり仕事だったり、友人だったり、いろんなものに助けられ、影響を受けて、自分っていう人格が形成されているんだっていうことです。

ポイントは、中心の「私」が大きくなり過ぎると自分が排斥されていくということ。
「私」(自我)が強くなりすぎると、まず自分の周りの人間がいなくなるでしょ。そして更に個が大きくなると、仕事もなくなる。そして何かも無視すると習慣までなくなる。
そんなことをしていると社会から追い出される。で、最後は文化からも排除される。

つまり、「私」という存在は、ほかの環境とか、他のファクターによって形成されているもの。それを無視して「私」を膨張させてしまうと、痛い目を見るよと、そんなことを表現してみた図です。

なるほど。これまたユニークな円グラフですね。
次回最終章では、松田さんの今後の展望について語っていただきます!

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